スマートホームの新規格Matterとは?賃貸での使い方も解説

スマートホーム入門
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スマートホームに興味が出てきた時、いざ製品を調べ始めると「メーカーが違うと連携できない」「設定が複雑そう」といった壁にぶつかりませんか?僕も賃貸でスマートホームを実現したいと思いつつ、どの製品を選べばいいか悩んでいました。

そんな中、スマートホームの共通規格として「Matter(マター)」という言葉をよく聞くようになりました。この記事では、Matterとは何か、その基本的な仕組みから、僕たち賃貸暮らしの視点でMatterのメリットやデメリット、実際の使い方や設定方法、そして日本国内での対応製品の状況まで、気になるポイントを整理していきます。

記事のポイント

  • Matter規格がスマートホームをどう変えるかが分かる
  • Thread(スレッド)などMatterを支える仕組みが理解できる
  • 日本国内の主なMatter対応製品が把握できる
  • 賃貸住宅でMatterを活用する具体的なメリットと方法が分かる

スマートホームの新規格「Matter(マター)」とは?

まずは、この「Matter(マター)」が一体何者で、なぜこれほど注目されているのか、基本からおさらいしてみましょう。これまでのスマートホームが抱えていた大きな問題を解決する、まさに「救世主」のような規格なんです。

これまでのスマートホームの問題点

これまでスマートホーム製品を揃えようとすると、大きな問題がありました。それは、「メーカーごとに使うアプリやハブがバラバラ」ということです。

例えば、「照明はA社、スマートロックはB社、スピーカーはC社」といった具合に揃えると、それぞれのデバイスを操作するために、スマホに3つの異なるアプリをインストールし、使い分ける必要がありました。これでは全然「スマート」とは言えませんよね。

また、「Apple HomeKitで使いたいのに、この製品はGoogle Homeにしか対応していない…」といった「プラットフォームの壁」もあり、製品選びが非常に窮屈でした。

Matterが解決する「メーカーの壁」

Matterは、こうしたバラバラだった状況を統一するために作られた、スマートホームデバイスのための「共通言語」のようなものです。

この規格を策定している「Connectivity Standards Alliance(CSA)」には、Apple、Google、Amazon、Samsungといった巨大IT企業をはじめ、IKEAやSwitchBotなど、数多くのメーカーが参加しています。

Matterの最大のメリット

メーカーやブランドの垣根を越えて、「Matter対応」というロゴさえあれば、どのプラットフォーム(Apple Home, Google Home, Amazon Alexaなど)からでもシームレスに操作・連携できるようになります。

つまり、僕たちユーザーは「このメーカーの製品じゃないと動かないかも…」と悩む必要がなくなり、「デザインが好き」「この機能が欲しい」といった、本来の基準で自由に製品を選べるようになるんです。

Matterの4つの基本特性

Matterは、ユーザー体験を向上させるために、以下の4つの基本特性を掲げて設計されています。

  1. シンプルさ

    セットアップがとても簡単。多くのデバイスはQRコードをスマホでスキャンするだけで、すぐにネットワークに接続できます。

  2. 相互運用性

    これが最大のキモ。前述の通り、メーカーの壁を越えてデバイス同士が連携できます。

  3. 信頼性

    インターネットがダウンしても、ローカルネットワーク内(家の中)でデバイス同士が直接通信できるため、安定して動作し続けます。クラウドサーバーが落ちて照明が点かない、といったトラブルが減るわけです。

  4. 安全性

    通信はすべてエンドツーエンドで暗号化され、デバイス認証も行われるため、セキュリティが強固です。

Matterの仕組みと「Thread(スレッド)」の関係

「Matter対応」と合わせて、「Thread(スレッド)対応」という言葉もよく見かけます。この2つは混同しがちですが、役割が異なります。Matterを支える重要な技術「Thread」についても見ていきましょう。

通信の仕組み(Wi-FiとThread)

Matterは、それ自体が通信方法(電波)というわけではなく、アプリケーション層の「共通言語(プロトコル)」です。

実際の通信には、主に以下の2つの技術が使われます。

  • Wi-Fi: スマートテレビやカメラなど、大容量のデータ通信が必要で、電源に常時接続されているデバイス向き。
  • Thread (スレッド): センサーや電球、スマートロックなど、消費電力を抑えたい(バッテリー駆動も多い)デバイス向き。

Matterは、これらWi-FiとThreadをうまく組み合わせて、家全体のスマートホームネットワークを構築します。

Thread(スレッド)とは? なぜ重要?

Threadは、低消費電力のメッシュネットワーク技術です。

「メッシュネットワーク」とは、デバイス同士が網の目のように直接通信しあい、データをバケツリレーのように伝達していく仕組みのこと。これにより、Wi-Fiルーターから遠い場所(例えば、玄関のスマートロックや浴室のセンサー)でも、途中のデバイス(照明など)が中継役となって、通信を安定して届けることができます。

Threadのメリット
  • 低消費電力でバッテリーが長持ちしやすい。
  • メッシュ構造で通信範囲が広く、安定性が高い。
  • デバイスが増えるほどネットワークが強固になる。
<strong>YUTO</strong>
YUTO

Matterの信頼性や応答速度の速さは、このThread技術によって大きく支えられているんですね。

ハブ(ボーダールーター)の役割

Threadデバイスを使うためには、そのThreadネットワークを家庭内のWi-Fiネットワークやインターネットに接続するための「橋渡し役」が必要です。これを「Threadボーダールーター」と呼びます。

「また新しい機械が増えるの?」と心配になるかもしれませんが、実はすでに多くの製品がこの機能を内蔵しています。

▼ 主なThreadボーダールーター対応製品

  • Apple HomePod (第2世代), HomePod mini
  • Apple TV 4K (Wi-Fi + Ethernetモデル)
  • Google Nest Hub (第2世代), Nest Hub Max
  • Amazon Echo (第4世代)など

これらのスマートスピーカーやデバイスが1台家にあれば、それが自動的にボーダールーターとして機能し、Thread対応のMatterデバイス(電球やセンサーなど)をネットワークに迎える準備が整います。

Matter対応製品の現状と選び方

Matter規格は2022年10月にバージョン1.0がリリースされ、2025年現在、対応製品が急速に増えています。日本国内の状況を見てみましょう。

日本国内で買えるMatter対応製品

すでに日本市場でも、照明、スマートロック、スマートプラグ、センサー類など、多くのMatter対応製品が販売されています。

▼ 主な対応メーカーと製品カテゴリ

  • スマートスピーカー/ハブ: Apple, Google, Amazon の主要製品
  • 照明: Philips Hue, IKEA (TRADFRI), SwitchBot, Aqara
  • スマートロック: SwitchBot, Aqara
  • その他: センサー類, スマートプラグ, ロボット掃除機など

特にSwitchBotやAqaraといった、これまでもスマートホーム製品で人気のあったメーカーが積極的にMatter対応を進めている印象です。

既存製品のMatter対応(ブリッジ機能)

すでにSwitchBotハブやAqaraのハブを持っている場合、それらがファームウェアアップデートでMatterに対応(ブリッジ機能)することがあります。これにより、既存のBluetoothやZigbee製品(Matter非対応)も、ハブを介してMatterシステムに統合できる場合があり、これまでの投資が無駄にならないのは嬉しいポイントです。

IKEA(イケア)の参入が鍵?

個人的に注目しているのが、IKEAの動向です。

IKEAは、Matter対応のスマートホームハブ「DIRIGERA(ディリゲーラ)」をすでに発売しており、2026年以降、スマート電球やセンサーなど20種類以上のMatter対応製品を投入すると発表しています。

IKEAの強みは、なんといってもそのデザイン性と低価格戦略です。IKEAが安価でオシャレなMatter製品を本格的に市場投入すれば、スマートホームが一気に大衆化する「起爆剤」になるかもしれないと期待しています。

メーカー側の課題(コストと製品価格)

一方で、僕たち消費者にとって少し気になる点もあります。それは製品価格です。

メーカーがMatter対応製品を販売するには、Matter認証だけでなく、通信方式(Wi-FiやThread, Bluetooth)ごとの認証も取得する必要があり、これにかなりの開発・認証コストがかかると言われています。

価格に関する注意点

これらの認証コストは、製品価格に上乗せされる可能性があります。そのため、同じ機能の従来品と比べて、Matter対応製品は価格が高くなる傾向があるかもしれません。

ただし、これはあくまで一般的な傾向です。IKEAのような大規模メーカーの参入や、技術の成熟によって、将来的にはコストが下がっていくことが期待されます。購入時は価格と機能、そしてMatter対応のメリットを比較検討することが重要です。

賃貸住宅でMatterをどう活かすか

さて、僕たちの視点、つまり賃貸住宅でこそMatterは真価を発揮すると僕は考えています。なぜなら、制約の多い賃貸環境の悩みを、Matterがうまく解決してくれるからです。

賃貸こそMatterがおすすめな理由

賃貸暮らしでスマートホーム化を進める際、最大の懸念は「原状回復」ですよね。壁に穴を開ける工事はできませんし、引っ越しの際にはすべて元に戻さないといけません。

Matter対応製品の多くは、こうした賃貸の事情にピッタリです。

  • 工事不要・取り外し簡単: スマートロックも賃貸向けの後付けタイプが多く、照明(電球)やセンサーも置くだけ・貼るだけ(両面テープ)で設置できるものが主流です。
  • 引っ越し時の持ち運びが容易: デバイス自体を持ち運べるため、次の家でもそのまま使えます。

そして、Matterの「メーカーの壁がない」という特性が、引っ越しでさらに活きてきます。

Matterのセットアップ方法(コミッショニング)

Matterデバイスの初期設定(コミッショニング)は、驚くほどシンプルです。

基本的な流れは、デバイス本体や箱に印字されているMatter用のQRコードを、スマホの(Google HomeやApple Homeの)アプリでスキャンするだけ

従来のデバイスのように、「まずメーカーの専用アプリでWi-Fi設定をして、アカウント登録して、それからGoogle Homeアプリ側でも連携設定をして…」といった面倒な手順が大幅に簡略化されています。

複数のプラットフォームで使える「マルチアドミン機能」

これが賃貸・引っ越しユーザーにとって最強の機能だと僕は思っています。それが「マルチアドミン機能」です。

例えば、今住んでいる家では「Google Nest Hub」を使っているとします(プラットフォームA)。でも、引っ越し先では「Apple HomePod」を使いたくなるかもしれません(プラットフォームB)。

マルチアドミンなら引っ越しも怖くない!

Matterデバイスは、一度セットアップした後でも、Google Home、Apple Home、Amazon Alexaなど、複数のプラットフォームに「同時に」登録して、どれからでも操作できます。

プラットフォームを乗り換えるたびに、家中のデバイスをすべてリセットして再設定…なんていう悪夢のような作業が不要になるんです。

家族で使うプラットフォームが違う場合(僕はGoogle Home、パートナーはiPhoneのApple Homeなど)でも、全員が自分の使いやすい方法で家電を操作できるのも大きなメリットです。

Matterのセキュリティと今後の展望

最後に、Matterの安全性と、これからどう進化していくのか、将来性についても触れておきます。

セキュリティは本当に安全?

家中のデバイスがネットワークに繋がるわけですから、セキュリティは最も気になるところです。

Matterは、この安全性を非常に重視して設計されています。

  • デバイス間の通信はすべてエンドツーエンドで暗号化されます。
  • ネットワークに参加するデバイスは、すべて正規の製造元による「証明書」を持っており、偽物のデバイスがネットワークに侵入するのを防ぎます。
  • バージョン1.2以降では、秘密鍵の管理など、さらにセキュリティが強化されています。

もちろん「絶対安全」とは言い切れませんが、規格レベルでこれだけ強固なセキュリティ対策が組み込まれているのは、大きな安心材料になります。

セキュリティに関する注意

Matterの規格自体は安全性が高いですが、私たちユーザー側のセキュリティ意識も同様に重要です。Wi-Fiルーターのパスワードを複雑にする、ファームウェアを常に最新の状態に保つなど、基本的な対策は怠らないようにしましょう。

今後のアップデートとAI連携

Matterはまだ新しい規格であり、現在進行形で進化しています。2025年8月にはバージョン1.4.2がリリースされるなど、アップデートで対応できる家電の種類(ロボット掃除機、カメラ、EV充電器など)がどんどん増えています。

重要なのは、これらのアップデートは「後方互換性」が維持されること。つまり、新しい規格が出たからといって、古いデバイスが使えなくなるわけではないので、安心して導入できます。

今後は、Matterで繋がったデバイス群を、AIが状況に応じて自律的に制御する「文脈理解型のスマートホーム」へと進化していくと見られています。家が住人の状況を理解して、先回りして動いてくれる未来が近づいているのはワクワクしますね。

まとめ

Matterは、スマートホーム業界の「メーカーの壁」という長年の課題を解決する、画期的な共通規格です。

「どのメーカーの製品を選んでも、好きなプラットフォームで簡単に、安全に使える」

このシンプルながらも強力なメリットによって、僕たち消費者は、ようやくメーカーの都合に縛られず、自由にスマートホーム製品を選べる時代に入りました。

特に、設置や設定が簡単で、引っ越し時の再設定も柔軟なMatterは、僕たち賃貸暮らしの強い味方です。日本国内でも対応製品は着実に増えていますし、IKEAなどの参入で、これからは価格もこなれてくることが期待されます。

まずは手始めに、Matter対応のスマート電球1個から、新しいスマートホーム体験を始めてみてはいかがでしょうか。

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